山口誓子の俳句
山口誓子の俳句一覧です。
春の俳句
- 近づくにつれ塔重き 春の暮
- 天よりも かがやくものは 蝶の翅
- 潮音寺 春潮の音 聞く寺か
- 流氷や 宗谷の門波 荒れやまず
夏の俳句
- 吾の航く 天に峯雲 堵列せる
- 火口ちかし 降りし氷雨に 手を衝たる
- 夏の河 赤き鉄鎖の はし浸る
- 匙なめて 童楽しも 夏氷
- 七月の 青嶺まぢく 溶鉱炉
- 離宮内にて 麦藁を焚く 猛火
- ピストルが プールのかたき 面にひびき
- 葭戸(よしど)過ぎ 几帳も過ぎて 風通る
- 鯉幟 富士の裾野に 尾を垂らす
- 全長の さだまりて蛇 すすむなり
- 波にのり 波にのり鵜の さぶしさは
- 毒ありて うすばかげろふ 透きとほる
- 夏草に 汽罐車の車輪 来て止る
- 山窪は 蜜柑の花の 匂ひ壺
- 遠き世の 如く遠くに 蓮の華
秋の俳句
- 七夕や 天皇の御名を 書しまつる
- 愉しまず 晩秋黒き 富士立つを
- 無花果の ゆたかに実る 水の上
- つきぬけて 天上の紺 曼珠沙華
- 大文字 第一画の 衰へそむ
- 夕鵙に よごれし電球(たま)の 裡ともる
- 蟋蟀が 深き地中を 覗き込む
- かりかりと 蟷螂蜂の 皃(かほ)を食(は)む
- 石炭の 尽きし山々 紅葉せる
- 林檎樹下 病める林檎の 集められ
冬の俳句
- 冬ざれの 塩田を踏む 許得て
- 海に出て 木枯帰る ところなし
- 大日輪 霧氷を折りて 手にかざす
- 冬河に 新聞全紙 浸り浮く
- 夜を帰る 枯野や北斗 鉾立ちに
- スケートの 紐むすぶ間も はやりつつ
- 手袋の 十本の指を 深く組めり
- 学問の さびしさに堪へ 炭をつぐ
- 雪の富士 高し地上の ものならず
- 浮く鴨に 志賀のさざなみ 細かなり
- 生きてゐる 牡蠣その殻の ざらざらに
- 玄海の 冬浪を大と 見て寝ねき
- 落葉松(からまつ)は 直幹落葉 しつくして
新年の俳句
- 初富士の 鳥居ともなる 夫婦岩
- 枯れざまの 揃ひし蘆や 初筑波
- 初凪の 一湾海の 門まで見ゆ
- 年礼に 来し木匠の 木の香する
- 日本が ここに集る 初詣
- 初神楽 太く神慮に 叶ひたり