斎藤茂吉の短歌
- 朝あけて 船より鳴れるふとぶえの
こだまは長し なみよろう山 - 死に近き 母に添寢のしんしんと
遠田のかわず 天に聞こゆる - みちのくの 母のいのちをひと目見ん
ひと目見んとぞ ただにいそげる - 空海の まだ若かりし像を見て
われ去りかねき 今のうつつに - 我が母よ 死にたまひゆく我が母よ
我を生まし乳足らひし母よ - のど赤き 玄鳥ふたつ屋梁にゐて
足乳根の母は 死にたまふなり - 最上川の 上空にして残れるは
いまだうつくしき 虹の断片 - 最上川 逆白波のたつまでに
ふぶくゆふべと なりにけるかも